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翼の帰る処

「翼の帰る処」は妹尾ゆふ子さんの小説で、幻狼ファンタジアノベルズから出ています。
いわゆるライトノベル、略してラノベというやつでございます。軽くてふわふわして、読み流せる、の意。
ラノベといえど、なかなかあなどれないストーリーテラーがおいでなのは重々承知の上だったのですけれど、このファンタジー小説にはすっかりやられてしまいました。ささめ、ノックアウトでございます。

ラノベにはお約束のかなりぶっとんだ現実離れした設定は、一歩間違えば厨二病と言われてもしかたのない陳腐なものに落ちてしまう危険をはらんでいます。ゆえに、おもしろくない、おもしろい、を分けるに重要なポイントは、緻密な世界をまるでありありとそこにあるかのように写実的に構築できるかということと、繊細かつ具体的に考察された人物設定なのかなぁと思ったりいたします。

純ファンタジーに要求される文学的要素はおそらく「現実世界の象徴」ですが、ラノベではそれに加えて「エンターテイメント」の要素も必ず必要とされます。有る程度わくわくする活劇がないと、読者はあっさり読むのをやめてしまいます。
現実を彷彿とさせる卑近な世界と、それでいて現実にはあり得ないような、夢いっぱいな幻想的な出来事を矛盾なくかみ合わせるのは、なかなかの手腕が要るような気がいたします。

「翼の帰る処」では、そのどちらもが、行きすぎず、足り過ぎず、自然に過不足なく組み合っているところが非常に見事だなぁ、と思います。

主人公はヤエトという36歳の尚書官。過去視という特殊な力を持つ青年です。
このヤエトが、とにかくいい味を出しています。頭脳明晰なのですが、一番の望みは「隠居」すること。
とにかく何もせず誰にも合わず、面倒にかかわりあわずだらだらと過ごしたい、というのが唯一の欲で、他はやる気も覇気もさっぱりありません。
おそろしく病弱で、冷たい風に当たっては熱を出して寝込み、野外で野宿すれば死にかけ、とにかく危なっかしいことこの上ありません。
このヤエトが、皇帝陛下の御息女の相に大抜擢されたところから、物語は始まります。
極端な男尊女卑の世界の中で、皇女には皇位継承権はありませんが、男勝りで闊達な皇女は、6人もいる兄達との陰謀だらけの権力闘争の渦にいやおうなく巻きこまれていきます。
もちろんヤエトも皇女に仕える側近として巻きこまれます。隠居が唯一の望みなのに、なぜか大貴族に叙せられ、さらに…という展開。

たくさんの鳥さんが出てくるところは、鳥好きの心をいたくくすぐります。鳩のような小鳥も出てくれば、騎乗用の馬なみにでっかい鳥さんもぞろぞろ…この鳥さんは、乗り手と心を通じ合わせて飛翔するという特殊な鳥さんたちです。皇女のおさめる北嶺では、この巨大な鳥さんと人とが共存しています。
作者の方はきっと鳥好きで、実際に鳥をお飼いなのだろうなと思われます。鳥さんたちの生き生きとした描写、たとえば鳥さんは喜怒哀楽が豊かで、怒ると羽をふくらませてくちばしをカチカチ鳴らすとか、ほっぺたやら頭頂をうりうりすると恍惚とした表情をしてぐいぐいこっちを押してくるとか、甘えるときはごく弱い力でこちらを甘咬みしてくるとか、鳥飼いさんにしかわからないような詳細な描写がきらりと光ります。

登場人物同士の会話は非常に知的です。ウィットのきいた何気ない会話の中に、裏の裏をかいたり、罠を仕掛けたり、相手が引っ掛かればよし、引っかからなければまた別の手を考える…といった知的遊戯が満載。これは非常に面白いです。
美男美女がぞろぞろ出てくるあたりは、ああラノベだなぁ、と思わされますが、やはりぶちゃいくよりはイケメンの描写の方が読んでて楽しいのは事実。全然OKです。
ストーリーはとにかくぐいぐい読ませる系で、伏線もばっちり、筋道も構成もしっかりしていて、どっぷりお話に浸れます。現在1~3巻(それぞれ上下)出ており、月末に4巻が出る予定ですが、長くなっても決して芯がぶれないあたり、しっかりした世界観の上に書かれているのだなぁと思わされます。


最後に、お話に出てくる飲食物を少しご紹介してみますね。

1.ジェイサルド特製・変なお粥

ジェイサルドというのは主人公ヤエトの護衛をつとめる騎士団長です。砂漠の悪鬼の異名をとる元極悪人ですが、現在はヤエトの側に仕えています。
彼の趣味は薬膳。
病弱な主人のためにつくる粥は、しかし味が見事に崩壊しています。
異様に苦くて口が曲がるほどの粥は水を飲むとさらに苦味が増して悶絶します。葉っぱに巻かれた何かは、葉っぱは甘いのに中身の何かは極端に辛い。食べるとどっと汗が噴き出る代物です。デザートにと出された果物はこれまた酸っぱさMax。ヤエトはいつも脂汗をたらしつつ、今日も薬膳をすすっています…気の毒に。

2.スーリヤ特製・美味しいお菓子

香辛料が効いていてぴりりとしているのに、口にいれるとふわぁと溶ける美味しい焼き菓子。スーリヤという、ヤエトの女官が作るお菓子です。
スーリヤというのはまた謎の多い女性でして、どうも大貴族の血が半分入っているようなのですが、女郎屋に売られてそこからヤエトの召使に回されました。
しおらしくて愛らしく、ヤエト命っぽいスーリヤですが、あまりの典型的な「かよわい娘」っぷりに、ささめは彼女が何か恐ろしくってなりません。この女、やがてヤエトの敵に回るのでは…?と思ってしまいます。

3.北嶺特製・包み焼き

偏食のヤエトが「片手で食べられるからわりと気に入っている」唯一の料理、刻んだ肉と野菜を皮で包んで揚げた料理です。昼はいつもこれを厨房で作ってもらい、自室でもぐもぐするヤエトでした。
北嶺はその名の通り冬は極寒の地、寒い地方の食べ物は割とこってりと油っぽいものが多いものです。きっとこの包み焼きも、かなり獣脂をつかってお腹にどしっとくるものなのかなぁ、と。おいしそうですけれどもね。


もしもご興味持たれましたら、是非ちらりと本の頁を覗いてやってくださいね。
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2013-02-24(Sun)
 

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こんばんは 

ラノベのジャンルって読んだことないかも?と思いつつ、
古くは銀英伝とかもその範疇なのでしょうか。

話は逸れますが、ラノベ原作のアニメ(いわゆる深夜アニメ)に、
「ささみさん@がんばらない」というのがあるんですよ。ささめさんじゃなく、ささみさん。
とりあえず第一話だけ見たら面白そうなので、毎週録画してます。
録ってるだけで、その後はまだみてないんですが^^;
1クール終わったら一気にみようかな、と。
(そのパターンで2話でくじけて、まとめて削除した経験もありますが)
2013-02-25 18:20 | pispofp | URL  [ 編集 ]

 

>>pispofpさん

おお旦那様、せっかくコメントをくださいましたのに、お返事が遅くなってしまって申し訳ございません;
うんうん、きっと銀英伝もライトノベル…だと思うのですが、ささめも今一つ定義がよくわかってなくってアカンタレなのでございます。
「ささみさん@がんばらない」、ウィキで調べてみましたら、設定読んだだけで、ぷぷぷ、ぷぷぷぷ、となりました。あ、オナラではございませんとも、楽しくって笑ってしまった音ですよ。
ささめの肉を削っても脂身がおおくてとてもささみにはなりませんが、ささみさん、なかなか楽しそうなお話ですね(笑)アマテラスとか日本系の神様とか出てくるのは大好物でございます。録画、してみようかしらん…

素敵情報をありがとうございましたv@ささめさんも全然がんばらない
2013-02-28 19:52 | ささめ | URL  [ 編集 ]

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